TikTokで勝手にアカウントが作られ続けるので、Claudeでカナダのprivacy法に則って通報をした

2026-04-24 17:27:00 -07:00 · 10 min read
post カナダ生活
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この記事は、Claude Opus 4.7とのやり取りを通じて解決した問題の顛末を、Opusに書かせたものです。ある程度のレビューはしていますが、情報の確実性はご自身で再検証することをおすすめします。

tl;dr

  • 自分が使った覚えのない TikTok アカウントが、僕のメアドで2つ作られていた(@chezou2 と @nigtg679)
  • TikTok はメアド認証なしでアカウント登録を許可している。これが構造的な同意の欠落
  • TikTok サポート経由で1つ目を削除させたが、しばらくして別のアカウントが同じメアドで作成され再発
  • カナダの規制機関2つに通報した
  • OPC は2025年9月に既に TikTok 相手に joint investigation の Report of Findings (#2025-003) を出しており、僕の complaint はその文脈に乗る形になった
  • カナダ居住者なら同様のケースで使える手順をまとめておく

何が起きたか

2025年11月頃から、[email protected] という送信元から「新しいデバイス(LGE LM-Q730)からログインがありました」というメールが届くようになりました。僕は LG の Android 端末を持っていません。そもそも TikTok のアカウントを作ったことがありません。

メールの宛先は僕のプライベートのGmailのメアド。メール内では @chezou2 というハンドルが言及されていて、僕のハンドル(@chezou ベースのもの)に近い名前で誰かがアカウントを作ったらしい、ということがわかりました。

ここで気付いた違和感: TikTok は、メアド認証なしでアカウントを作らせている。僕のメアドに「このメアドで TikTok アカウントを作ろうとしている人がいます、本人ですか?」という確認メールは一度も来ていない。にもかかわらずアカウントが成立している。

つまり、登録時のメアド入力に対する所有確認が一切行われていません。誰でも他人のメアドでアカウントを作ることができ、本来の所有者は通知メールを受け取り続ける構造になっている。

1回目の対応:3月にTikTokサポートへ

3月15日、TikTok の privacy report フォーム(https://www.tiktok.com/legal/report/privacy)から「Report a potential privacy violation」として通報しました。

返信は [email protected] から、テンプレ的な内容で「アカウントを削除したい場合は、ログインして設定画面から削除してください」というもの。そもそも自分のアカウントじゃないからログインできない、というのが問題の本質なのに、こちらが所有者であることを前提とした応答が来る。

返信して「これは僕のアカウントではない、誰かが僕のメアドで作ったものだ、削除してほしい、PIPEDA 適用の話だ」と書きました。すると次の返信で、こう言われた。

アカウント所有を確認するため、以下の情報を提供してください: 登録日、最初のログイン場所、登録時のデバイス、登録時の電話番号、リンクされた SNS アカウント…

これに答えられるわけがない。答えられないこと自体が、僕が所有者でない証拠です。再度返信して、「これらの情報を提供できないこと自体が、僕がアカウントを作っていない証拠だ。所有者であることを示せという要求は、non-user からの申し立てには構造的に応えられない」と書きました。あわせて「30日以内に解決しない場合は OPC に formal complaint を出す」と通告。

その後、@chezou2 は削除されました。

ところが再発

僕が TikTok への返信で「30日以内に解決しなければ OPC に formal complaint を出す」と通告していたのですが、その期限が過ぎた翌日の4月16日から、別の送信元([email protected]、Reply-To が [email protected])からメールが来るようになりました。今度は @nigtg679 という別のハンドル宛て。フランス語で「Mrs-mama💕✨️😘 t’a envoyé un message」みたいな、フランス語圏ユーザーからのメッセージ通知。

つまり、@chezou2 が削除された後、また別の誰かが僕のメアドでアカウントを作ったわけです。

ここで個人の問題を超えていることがはっきりしました。個別アカウントを削除しても、TikTok がメアド認証を実装しない限り、永遠に同じことが繰り返される

ちなみに Reply-To にある [email protected]edm は業界でいう “Electronic Direct Mail”、つまりマーケティングメール基盤の符牒。TikTok 自身がこれらの通知メールを marketing email infrastructure 内で扱っている、という小さな証拠でもあります。

規制当局ルートを2本

ここで「個別削除を申請し続ける」のは無限ループだと判断し、規制当局に持ち込むことにしました。カナダで使えるルートは2本あります。

CASL(Canada’s Anti-Spam Legislation) / CRTC

CASL は同意なき商業電子メッセージ(CEM)の送信を規制する法律。ポイントは:

  • 違反に対して 罰金を課す権限 が CRTC にある
  • TikTok からの通知メールは「TikTok プラットフォームへの利用を促進する」 = 商業活動の促進、と解釈できる
  • transactional notification(アカウント所有者向けの取引通知)の例外は、僕が アカウント所有者ではない ので適用できない

通報先は CRTC Spam Reporting Centre[email protected])。実は メールに直接転送できる(オンラインフォームより楽)。コンテキスト説明メールを1通送り、添付として証拠メールを .eml 形式で5通同梱して送信しました。

注意点: SRC は個別の case outcome を complainant にフィードバックしません。だから「処理が終わったら教えて」という期待はできない。集積されたデータが enforcement target の特定に使われる、という形。

PIPEDA(Personal Information Protection and Electronic Documents Act) / OPC

PIPEDA は個人情報の収集・使用・開示に同意を求める法律。本件で問われるのは Schedule 1 の Principle 4.3(Consent)。

OPC への formal complaint は online form 経由。ここで がありました。

フォームの自動ロック問題

最初に試した時、フォーム内に「他の機関に同じ件で complaint を提出していますか?」という質問がありました。CRTC SRC に出しているので素直に「Yes」と答えたら、システムが自動的にセッションを終了させ、「他の手続きを完了させてからまた来てください」というメッセージで蹴られました。

しかし SRC は個別フィードバックを出さない(前述)ので、待っていても「終了」は永遠に来ない。これでは PIPEDA 申立てが事実上不可能になる。

Information Centre 経由でリカバリ

OPC には Information Centre があり、自由記述2,000文字以内で問い合わせができます。ここに「自動ロックされた、CASL と PIPEDA は対象としている問題が違う、どうしたらいいか」という旨を送ったところ、24時間以内に OPC の担当から書面で返信が来ました。

返信内容は要約すると:

  • TikTok の privacy contact(TikTok Inc., Culver City)へ書面で連絡することを推奨
  • それでも解決しない場合は、formal complaint を提出してよい
  • フォームの「他機関への complaint」質問には 「No」と答え、free text section で状況を説明 してほしい

OPC自身がフォームのバグ的挙動を認識していて、回避方法を書面で指示してくれた、というわけです。

Formal complaint の構成

OPC オンラインフォームは Part A(組織への接触履歴)/ Part B(管轄判定)/ Part C(詳細・救済)の3部構成。Part C は4つの自由記述欄があり、それぞれ500〜2,500文字制限。

法的根拠の組み立てとしては:

  • Principle 4.3 (Consent): 同意なしに個人情報(メアド)を収集・使用している
  • Principle 4.3.2 (Meaningful consent): メアド認証がない以上、同意の存在を裏付ける機構がそもそも存在しない
  • Reasonable expectations of a non-user: PIPEDA Findings #2012-002(Facebook が non-user のメアドを friend suggestion に使った件)が直接の precedent

要望としては:

  1. PIPEDA s.17.1 に基づく Compliance Agreement — メアド認証義務化、non-ownership-based の苦情プロセス整備
  2. 僕のメアドに紐づく全アカウントの削除
  3. 僕のメアドの blocklist 登録
  4. Public Report of Findings の発行(僕と同じ被害に遭っている人がいるはず)

添付資料は8ページ以内、25MB以内で、TikTok サポートとの3月の往復スレッド・OPC Information Centre からの返信・11月の security notification・4月の social notification サンプルを PDF 化して同梱しました。

既存の OPC × TikTok の文脈

書きながら気付いたのですが、OPC はすでに2025年9月に TikTok 相手の Report of Findings (#2025-003) を出しています。OPC、CAI(Quebec)、OIPC BC、OIPC AB の4機関 joint investigation で、主に未成年者からの同意取得とターゲティング広告の問題に焦点が当てられたもの。

僕のケースは未成年者問題ではなく、non-user の同意を得ない個人情報利用という別の角度ですが、「TikTok の同意取得の実務全般に問題がある」という OPC の認識と整合する話。投稿のタイミングとしては悪くない(OPC の興味の射程内に入りやすい)。

ちなみにこの Findings の中では、BC PIPA と PIPEDA の jurisdiction 関係についても整理されていて、cross-border data flow の場合は両者が “airtight seal” で適用される、という理屈が示されています。僕が BC 在住で TikTok(シンガポール法人)相手という構図でも、PIPEDA 適用に問題がない理由がここで補強されます。

カナダ居住者へのチェックリスト

同じような状況に遭遇した人向けに、手順を整理します。

ステップ0: 現状把握

  • 不審なメールの送信元、送信日時、本文内容を保全する
  • Gmail なら spam フォルダから救出してラベル付け(30日で自動削除されるので注意)
  • 本文中に出てくる「自分のものではないアカウントハンドル」をメモ

ステップ1: 相手企業に書面で連絡

  • 企業の privacy report channel から書面で連絡する(メール、フォーム、どちらでもよい)
  • PIPEDA を引用する(信頼性が変わる)
  • 「自分は所有者ではない」「メアド所有者として削除を要求する」を明確にする
  • 30日以内の解決を促す

ステップ2: CRTC SRC に CASL 通報(マーケ性のあるメール)

  • [email protected] に状況説明+証拠 .eml を添付して送る
  • フォーム経由より、メール直接転送のほうがヘッダー情報が完全に保持されて証拠能力が高い
  • 個別フィードバックは来ない前提

ステップ3: OPC に PIPEDA complaint

  • まず Information Centre に状況を聞く(フォーム経由、2,000字以内)
  • 24〜48時間で返信が来る
  • 指示に従って formal complaint を提出
  • 添付資料は8ページ以内、25MB以内

注意点

  • OPC は現在処理遅延あり(数ヶ月)。すぐに結果は出ないと割り切る
  • BC OIPC(州機関)にも管轄が及ぶ可能性があるが、cross-border の場合は PIPEDA 適用が筋。OPC が必要なら自動的に振り分ける
  • OPC は order-making power を持たない(罰金を課したり強制執行したりはできない)。最強のツールは Compliance Agreement (s.17.1) で、これは Federal Court で強制執行可能。だから明示的に要求する価値がある

雑感

(ここは人間が書いています)

  • 今回、Sonnet 4.6で調査を開始したのだが、正式にcomplaintする段になって念のため出たばかりのOpus 4.7で検証をさせたところ、だいぶ間違いや思い込みを正せたのでよかった
    • たとえば「30日対応がなければ OPC に行ける」という Sonnet の主張は、実は法的根拠がなく Sonnet が圧力装置として勝手に設定した期限だった、というのを Opus に指摘された。これは戦術的には機能するものの、法的デッドラインと誤認すると別の判断ミスにつながるので、確認できてよかった。
  • こういう法律系の調査を全部自力でやるの相当厳しいので、リファレンスはAIに取ってこさせて自分でも確認するのが良さそう
  • こういった重めのトラブル解決を考えると、個人でLLM系のサービスを契約しないと辛いですね…
Aki Ariga
Authors
Staff Software Engineer
AI Product Engineer. Interested in Machine Learning, MLOps, and Data driven business. If you like my blog post, I’m glad if you can buy me a tea 😉

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