年度途中に海外移住した年の給与・退職所得の扱い

日本法人を年度途中に退職し、海外移住で非居住者になった場合、様々な気づきにくいポイントがあります。
ここでは、その基本を簡単にまとめておきます。
関連する税金の話
支払日が移住後の給与所得、退職所得の扱い
移住後に受け取った給与所得
例えば、3月31日付けで日本法人を退職し、4月1日に海外へ移住、最終月の給与支払いが4月25日に行われたとします(月末締め翌月25日払い)。その時、3月いっぱいの給与は国内源泉所得に当たるため、日本での所得税の課税対象になります。
ただし、支払日が4月なので既に税法上の非居住者の扱いになるため、所得税は20.42%の課税になります。また、退職後の給与、賞与であっても雇用保険料は引かれます。
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なお、非居住者になった後の給与所得は源泉分離課税のため、出国前の所得税に関する確定申告(総合課税)とは別になります。源泉分離課税は控除等対象ではなく、引かれて終わりになるため、総合課税の申告に混ぜないように注意してください。
移住後に受け取った退職所得
例えば、3月までの退職金が、4月移住後5月25日に支払われたとします。これは受取日が非居住者になっているため、源泉所得税が20.42%かかります。
居住者の退職所得であれば、短期間の勤務であれば 勤続年数×40万円 の退職所得の控除が発生します。ですが、非居住者の場合は控除は発生せず何もしないと 20.42% の所得税が源泉分離課税されて終了になってしまいます。
なお、非居住者の退職所得には20.42%の所得税以外が引かれることは通常ありません。源泉徴収票を見て、そうなっていなければ会社に問い合わせましょう。
それでは不公平だというので、非居住者に対して退職所得の選択課税という制度があります。
非居住者の退職所得の選択課税について
非居住者の退職所得に対する不公平感をなくすため、申請すれば控除されて還付される「退職所得の選択課税」という制度があります。これは、自動では適用されず申請すると退職所得の控除が適用されるという制度です。
ただ、相当特殊な話なようで、国税庁のサイトから適切な説明を見つけることはできませんでした。
書き方は、以下のサイトの書き方を参考に確定申告書Bの申告書に「退職所得の選択課税の申告書」という但し書きをタイトル付近の余白に書いて提出すればよいそうです(川崎南税務署談)。
この書類は、分離課税に関する申告書ため、通常の確定申告書とは別に用意する必要があるので注意が必要です。
それぞれ、納税管理人に提出してもらいましょう。
納税証明書を会社経由で申請しよう
一般的に、国内源泉所得については日本に源泉分離課税で所得税を支払うことになります。そのため、その分の所得税を支払い済みであることを居住国(私の場合はカナダ)に証明することで、控除等が受けられるでしょう。
その際の証明には、非居住者の源泉所得税の納税証明書を取得すると英文併記の公的な書面が手に入るため有用です。
詳しくは以下を御覧ください。
[手続名]源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の納税証明願|国税庁
基本的にはこの書類が支払金額等の源泉所得税ベースで計算できる、正しい書類となります。
なお、源泉徴収票が間違っていることはままあるようなので、自分で検算して間違っていたら訂正を要求できるような胆力が必要です。
https://twitter.com/chezou/status/1490067138274422785?s=20&t=b-nlsaUJ50fhYzIsD11qqA
また、国税局電話相談センターの回答も間違っていることが往々にしてあります。結局は納税者自身がどうあるべきかを先に学び、それをもとに納税先の税務署に不明点がなくなるまで確認をするのが良さそうです。また、自分の置かれてる条件はきっちりと説明しないと、想定しなかった分岐が発生するケースもありますので、気を付けてください。
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chezou is a podcaster and technical blogger and open source developer