福田誠治著 「フィンランドは教師の育て方がすごい」読了

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フィンランド教育を日本に紹介している福田誠治氏の著書です。 フィンランドの教育が現状の形になった理由を、教員養成課程を中心に分析。著者は一貫して構成主義的な教育が重要と主張しています。

フィンランドの教員養成課程としては主に、下記の様な特徴が記述されています。

  • 教師が、医師や弁護士並にの専門職扱いなので、尊敬されまたやりがいも感じている。(大学に入る段階で選別されているので、皆教師になれる)
  • 実習期間・回数が多く、理論と実践を両輪で進めていく大勢になっている。
  • 実習も複数人でサポートしながら行う。授業後は綿密な反省会を行う

その他のフィンランド教育の特色としては、このようなことが書かれていました。

  • そもそも教師は、授業のことしかほとんどやらない。カウンセラー等と役割分担がはっきりしている
  • 国の根幹として個人中心で教育することに素養があった
  • テストの点数で管理するのではなく、目標の達成度で子どもの進度を把握 フィンランド教育の問題点としては以下のことが記述されています。
  • 学校で部活などの時間がなくいじめなどが起こってもはけ口が少なく、子どもたちも学校があまり好きではない
  • 整った学習環境のため、出来ないことは自分自身が努力しないせいとなってしまう。
  • 移民がドロップアウトする率が高い

新自由主義の規制緩和の流れと、国としての教育観が個人主義的・現場への裁量 を多く与えることによる機会均等への努力がうまく交わって、現状の形に行き着いたと考えられる、というのが著者の言いたいことなのかなと思いました。このことからも単純に日本に適用するのは難しいかな、という印象です。ほぼ公教育のみで、教師は医者や弁護士並にに尊敬されており、その質を保証するだけの狭き道です。それが維持できるのも、人口が日本より少ないかの国ならではではないでしょうか。538万人と1億2700万人の差は大きいでしょう。

ただ、日本としても参考にするべきと思った点が、ヨーロッパは国民教育から市民教育へと移行している、ということです。従来は国民としてのまとまりを作るための知識を教えていくという姿勢だったのに対し、これからは大学での単位互換だけでなく、EU内での移住を前提としたヨーロッパ市民としての素養を教育していくということだそうです。グローバル化によって、教育というものが一国の話だけではなくなってきたのです。この点は、現状のICT教育の議論を見ていて気になっていた疑問に対して一つの観点だなと思います。

公教育の再生が望まれる中で、現状の点数至上主義ではない教育とは何か?という問いに対する一つの解が、PISAで言われている読解力や21世紀型スキルなのだと思います。グローバルな学びを得ていくためには自ら問題点を見つけ解決していく構成主義的なアプローチを身につけていくことが重要となるのでしょう。個人的には、企業が求める人材を育てるというのは教育において一つの要求なだけであって、それが全てではないと思います。ともすると、大学入試に最適化しがちだった教育が、企業の求める人材像に最適化するのは本質的な取り組みではないように思います。

とりとめもなく書いてしまいましたが、フィンランドの教育実習の模様と、この本の最後に付けられている フィンランドの学習指導要領は必見 です。学習指導要領は大まかなガイドラインでしかない、という書き方が本書の中にも何度も指摘されていましたが、これを読んで現場の先生は地域にあった教育を展開していかなければならないのか、そう思いました。相当に頭を使わないといけないようです。 一部、フィンランド教育を礼賛したり、自説に引き寄せような気がする点もありますが、学習指導要領と教育実習の様子だけでも読む価値はあるかと思います。

Aki Ariga
Aki Ariga
Staff Software Engineer

Interested in Machine Learning, ML Ops, and Data driven business. If you like my blog post, I’m glad if you can buy me a tea 😉

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